「食べる人」 第4弾
地下鉄の車内に、ほの甘い、もったりとした匂いが漂い始めた。
前に座った24歳くらいの女性が、惣菜のパックを開けて、なにかを食べている。
一心不乱に食べている。
おにぎりやパンを車中で食べる人は見かけたことはあるが、惣菜は初めてである。
そこで、席を立ち、降りるフリをしながら覗き込んだ。
「おから」である。
「卯の花の炊いたん」である。
人参やらほうれん草、椎茸等が入った「おから」である。
よほどお腹がすいていたんだろう。食べる姿が懸命である。
しかし空腹なら、肉料理とかジャガイモ系とか、もっとお腹がたまる惣菜を選べばいいのに。
ダイエット中かベジタリアンか、さすがに車内で重量系おかずを食べるのは、気が引けたのか。
それにしても、勢いがすごい。
彼女は、瞬く間に食べ終えた。
蓋を閉め、箸とともに袋にしまう。
袋をのぞいて、なにか考えている。
別の惣菜が出るのか!
と期待したが、残念ながら「おにぎり」だった。
しかも「お赤飯のおにぎり」。
うん、惜しい。
おからには合わないと思う。
「食べる人」 第4弾
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